日本では今、かつて一般的だった豪華な葬儀から、よりシンプルな家族葬への移行が進んでいます。「全葬連」の調査によると、約7割の人が理想の葬儀として「家族葬」を選ぶと回答しています。少人数でアットホームな雰囲気の中、故人を静かに見送ることができる家族葬は、コスト面でもメリットがあるとして多くの支持を集めています。しかし、葬儀の小規模化が進む中で、新たな問題も浮上しているのです。それが「葬式格差」と呼ばれる問題です。
東京都内に住む角島みどりさん(仮名)は、母親の葬儀を家族葬で行ったことで、親戚から猛烈な批判を受けた経験を持っています。田舎では「葬儀は盛大に行うもの」という価値観が根強く、家族葬を選んだことで「親不孝もの」とまで言われたそうです。みどりさんは、「都会へ出て、田舎の義理人情なんてどうでもよくなったのね」「宝塚が大好きだった伯母さんがこんなちんまりした葬儀なんて、かわいそうだ」と親族から心無い言葉を浴びせられました。
みどりさんが家族葬を選んだ背景には、母親自身の「お金をかけなくていい。少人数で」という願いがありました。さらに、盛大な一般葬にかかる何百万円もの費用を負担するのは現実的ではなかったのも理由の一つです。しかし、実際に家族葬を進める中で、基本プランのシンプルさが物足りなく感じ、結局追加費用を払っていくうちに、最終的には一般葬とほとんど変わらない金額になってしまいました。それでも親戚からは「こんな簡素な葬儀では故人が浮かばれない」といった声が上がり、悲しみに暮れる間もなく批判に晒されたといいます。
このように、「葬儀格差」の問題は単なる費用の問題だけではなく、家族間の価値観や地域の慣習とも深く関わっています。誰しもいずれ迎える葬儀の場面ですが、あなたは自分の葬儀にどのくらいの費用をかけたいと思いますか? その費用をどのように準備するか、考えたことはあるでしょうか?
選択肢としては、葬儀保険や積立を利用して自分で準備する方法や、故人の遺志として生前に明確にしておくことで子どもや家族の負担を減らす方法などがあります。一方で、何も準備せず、最終的に家族や親族が金銭的な負担を背負うケースも少なくありません。また、葬儀にかける費用や規模は必ずしも故人の価値を測るものではありません。大切なのは、残された人たちがどのように故人を送り出したいか、その気持ちと現実のバランスをどう取るかです。
豪華な葬儀が必ずしも故人への尊敬を示すわけではなく、家族葬だからといって愛情が欠けているわけでもありません。これからの時代、葬儀の形はますます多様化していくでしょう。自分の最期をどう迎えたいのか、そのために何を準備するべきなのか、一度考えてみるのはいかがでしょうか?「葬儀格差」が浮き彫りになっている今、あなたはどんな葬儀を望み、その費用を誰に任せますか?