経済産業省が検討中の新制度、原発の新増設費用を電気料金に上乗せする案が波紋を広げています。東京電力福島第一原発事故以降、安全対策費の増大や電力自由化の影響で、電力会社が新たな原発投資に消極的になっているため、この制度の導入が議論されています。しかし、これは電力の自由化という理念に逆行するのではないでしょうか?
電力自由化は、消費者に選択の自由を与えることを目的としています。再生可能エネルギーを重視する新電力会社が登場し、競争が激化することで、価格の低下やサービスの向上が期待されました。しかし、原発建設費を電気料金に上乗せする新制度が導入されれば、消費者の選択肢は実質的に制限されることになります。
英国の「RABモデル」を参考にしたこの制度では、国が認可した原発の建設費や維持費を電気料金に上乗せして回収します。建設費が増加しても必要な経費と認められれば料金に反映され、計画中断時には国が補償する仕組みです。つまり、再生可能エネルギー100%の電気を選ぶ消費者も、結果的には原発の建設費を負担する可能性が高いのです。
このような制度が導入されると、電力自由化の根本的な目的が揺らぎます。電力自由化は、本来、消費者が自らの価値観や経済状況に応じて電力供給元を選べるようにするためのものです。再生可能エネルギーを支持する消費者が、原発の建設費を負担しなければならない状況は、公平とは言えません。
さらに、広く国民負担が増加することで、エネルギー政策への信頼が損なわれる恐れもあります。電力会社の利益を優先するような制度が導入されれば、消費者の不信感が高まり、電力自由化の理念に反する結果となるでしょう。
私たちが求めるべきは、透明性と公正性を備えたエネルギー政策です。消費者が自らの意志で電力供給元を選び、納得できる形で負担を分担する仕組みこそが、真の自由化と言えるのではないでしょうか。国民のための電力自由化を実現するために、今回の新制度についても慎重な議論が求められます。