ドラクエ3の性別表記廃止で巻き起こる議論:多様性への配慮は行き過ぎか?
11月14日発売予定のリメイク版『ドラゴンクエストIII』で、キャラクターの性別表記が廃止されることが発表され、賛否が巻き起こっています。もともと1988年にファミコンで登場した本作は、「男」「女」と明確に表記され、男女で異なる「性格」設定も特徴でしたが、今回「ルックスA」「ルックスB」という性別に関わらない選択肢に変更されています。SNS上では「ポリコレの影響がドラクエにまで来たのか」「配慮しすぎでは?」という声も多く見られますが、その背景にはゲーム業界全体で進む多様性推進の流れがあります。
一方、ドラクエ生みの親である堀井雄二氏も、性別の廃止に対して「男女でいったい誰が文句を言うんだろう」と発言。この発言が英語圏で広まり、X(旧Twitter)のオーナーであるイーロン・マスク氏がリポストするほど話題になりました。男女二者択一の性別表記に疑問を投げかけ、ポケモンなど他の人気ゲームでも性別表記廃止が広がる一方、こうした配慮がゲームの楽しさにどう影響するのか、意見は分かれます。
性別表記の廃止と、ゲームでの多様性の必要性
一般社団法人「fair」代表理事の松岡宗嗣さんは、「現実社会には多様な性のあり方が存在し、ゲームもその現実を反映すべきだ」と指摘しています。また、「トランスジェンダーやノンバイナリーの人々のために、ジェンダーに関するステレオタイプをなくし、外見や選択肢の多様性を増やすべきだ」と述べ、多様性への配慮がキャラクター選択の充実に繋がると訴えています。しかし、このような配慮が本当に必要なのかについては、疑問を持つ声も少なくありません。
一部のファンは、「あくまでゲームはファンタジーであり、現実社会の価値観をゲームに持ち込むべきではない」と感じています。特に懐かしい作品である『ドラゴンクエストIII』のリメイクに対して、「現代の多様性の考え方を取り入れることで、オリジナルの世界観が損なわれるのではないか」という懸念もあるようです。ファンタジーの世界における性別設定は、冒険の一部であり、登場キャラクターの個性を際立たせる要素でもあります。性別の選択がないことで、プレイヤーが求めていた自由さやキャラクターとの一体感が失われる可能性もあるでしょう。
ゲームの「多様性」と「ファンタジーの独自性」とのバランス
多様なユーザー層に配慮した変更が時代の流れとして受け入れられる一方、ファンタジーゲームならではの独自の世界観や設定が失われてしまうのではないかと危惧する声もあります。特に性別の廃止が多様性の一環として行われる一方で、「多様な性のあり方を尊重するために、必ずしも二者択一を避けるべきか」という根本的な問いも浮かび上がります。
ゲームが多様性の象徴として進化する中、ドラクエシリーズのように長く愛される名作においては、ファンが求めるオリジナルの雰囲気と現代社会の価値観との調和が重要です。性別表記廃止がファンタジーの醍醐味にどう影響するのか、今後のリメイク作品にも注目が集まるでしょう。